水平儀に関する調査資料


※ まず初めに、一般的に水平儀と呼ばれるものには、大きく区分して2種類存在する。一つは水平儀でもう一つは姿勢ジャイである。
 そして、水平儀も2つに区分でき、ジャイロ駆動の方法に違いにより空気式電気式とがある。
 当然のことながら、WW2当時の日本の水平儀は空気式であったわけである。
   
陸海軍とも方法は共通と思うが、零戦を例にあげ説明すると、エンジンの真空ポンプ(圧搾空気)からアルミ管・ゴム管を通り、水平儀の後
  部に達する。(この圧搾空気は旋回計にもつながっている。) 圧搾空気の力により、ジャイロを回転させているのである。
  あるマニアは自転車等の空気入れを水平儀につなぎ、ジャイロを回転させたと聞く。
(実行し、計器を破損しても当方は責任を持てない。)
※ 姿勢ジャイロは現用機の計器で、上下左右360度表示可能な計器であるが、水平儀には制限があり上下60度左右90度となっている。
  それぞれの違いは表にまとめたとおりです。
※ この他にジャイロを使用したものとして、上下のみの標示に使用した陸軍の降下速度計(海軍の水平儀3型)、陸軍の人工指向器(海軍の
 定針儀)、陸海軍の自動操縦装置等がある。
※ 水平儀作動停止レバー(計器の左下部)の表示には、陸軍用は「停」・「動」海軍は「閉」・「開」の違いがあった。


計器名 種 類 方 式 左右指示 前後指示 備 考
水平儀 水平儀 空気式 90度 60度 WWU当時の航空機
電気式 時期等細部不明
姿勢ジャイロ 360度 360度 現用ジェット戦闘機


海軍水平儀 海軍水平儀1型
東京航空計器株式会社製 田中計器製作所製 三菱電気株式会社製
陸軍98式水平儀 アメリカ製水平儀 イギリス製水平儀
東京航空計器株式会社製 東京航空計器株式会社製 スペリー社 会社名不明
※ 海軍水平儀1型及び陸軍98式水平儀とも直径11cmと計器としては大型である。
※ 英国製水平儀はグラディエーター及びソードフィッシュ等の複葉航空機に使用されていた計器である。
※ 陸軍98式水平儀には、明らかに参考(模倣)又はライセンス生産した可能性が見える。
※ 東京航空計器製水平儀1型にも
同じ事が言える。しかし、この計器には米国製水平儀と同じようにも見える。いずれにしろ良いと取りしたようだ。
※ 田中計器製作所及び三菱電気製の水平儀1型は、ほぼ同様の様式となっている。おそらく三菱 電気製は田中計器製作所の図面をもらい受け
 製造したものと思われる。

※ 三菱電気製の計器には水平儀の他、航路計もある。いずれも1式陸攻に取り付けられていた計器で自社GPで部品等を調達していたのだろうか。
海軍水平儀2型 ドイツ製水平儀 ドイツ製姿勢儀
東京航空計器株式会社製 東京航空計器株式会社製 アスカニア社 不勉強により会社名読めず
※ 海軍水平儀2型は、直径8cmと中型の計器となっている。
※ 中央は田中計器製作所製と言いたいところではあるが、東京航空計器株式会社製であったと記憶している。
※ このドイツ製水平儀は、Bf110・Me210・Me410等の双発戦闘機、Do17・He111等の爆撃機・輸送機等の大型機に使用されていた。
 その後、旋回計を下部に組み込んだ姿勢儀(電気式)は大戦中期以降、各種戦闘機等の航空機に使用されていた。
  なお、アスカニア社製水平儀はアメリカスペリー社のライセンス生産品でもある。
※ 日本においてもドイツ製姿勢儀を参考に陸軍4式・海軍5型水平儀として制式採用した可能性がある?(実物を見ていないので断言できない。)
  
なお、イギリス製は中型、アメリカ・ドイツ製はともに大型の計器の分類にはいる。


水平儀1型にみる形状の相違
上側
※ 3個とも東京航空計器叶サで、左から陸軍98式人口水準器(後期生産型)、中央
 が海軍水平儀1型(中期以降生産型)、右が海軍水平儀1型(初期生産型)の順
※ 初期生産型は、中期以降生産型と比べると奥行きが多少短いのが確認できる。
※ 陸軍98式人口水準器(後期生産型)の本体は茶色塗装となっているが、海軍の
 茶色塗装はいまだに確認していない。

A: 空気孔開閉レバー
B: ジャイロ振止装置
C: 銘板(初期型では下部に取り付けられている。)
左側
※ ともに陸軍98式人口水準器であるが、後期生産型のみに「旋回誤差防止装置付」
 のシールが貼り付けられている。
初期生産型の写真提供者: Hirokazu Sugiyama